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【特別対談】プレイド桑野CGO × HIS澤田が語る「AI・テクノロジーを活用したサステナビリティ」

2026/10/30

対談
顧客体験の最大化

2026年9月28日から10月9日にかけて開催された、HIS社員が持続可能な未来を目指し理解を深める社内イベント「HISサステナビリティウィーク2026」。データ活用とCX向上をともに推進する株式会社プレイド 執行役員 CGOの桑野 祐一郎氏をお迎えし、HIS代表取締役社長の澤田とともに実施した特別対談の模様をお届けします。「AI・テクノロジーを活用したサステナビリティ」をテーマに、現場での先進的な取り組みから未来の旅行体験、持続可能な働き方の可能性まで議論を交わしました。

株式会社プレイド 執行役員 CGO(Chief Growth Officer) 桑野 祐一郎 

外資系IT企業の日本法人立ち上げやカントリーマネージャーなどを経て、プレイドに入社。Chief Growth Officerとして、顧客データやCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」の活用を軸に、企業の事業成長および顧客体験向上を牽引している。

株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役社長 澤田 秀太

モデレーター
株式会社エイチ・アイ・エス 経営企画本部 村杉 祐貴










※記事の内容はインタビュー当時のものです。

一プレイド社の紹介とAI活用の位置づけ

村杉:本日のテーマは「AI・テクノロジーを活用したサステナビリティ」です。ゲストとして、2023年よりHISとCX(顧客体験)向上に取り組む株式会社プレイド 執行役員 CGOの桑野様をお迎えしました。

桑野:弊社は、顧客とともにビジネス成長を実現するパートナーとして支援を行っています。CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」などを提供し、Webやアプリ、接客データ等を活用したCX向上や売上向上を伴走・支援しています。また、従業員体験(EX)を高めて顧客体験や売上向上に繋げるダッシュボード(情報共有画面)構築なども手がけています。

澤田:AIやテクノロジーは単なるコスト削減や業務効率化といった「守りのツール」にとどまりません。お客様に「心躍る体験」を届けるためのCXの進化、そして現場の社員がより誇り高く、創造的に働ける人的資本経営の推進という「攻めのサステナビリティ」の原動力として捉えています。この挑戦と未来の可能性について議論を深めていきたいと思います。

ーデジタルとリアルの融合がもたらす旅行業のCX変革

村杉:プレイド様とHISは2023年からWebサイトのパーソナライズから店頭での接客工程まで実証実験を重ねて「KARTE」の実装に移してきました。この取り組みはGoogle社の5月のカンファレンスで「デジタルとリアルの美しい融合」として取り上げられました。プレイド様とHISの取り組みについてご紹介をお願いします。

桑野:2025年の弊社の年次カンファレンス「X DIVE(クロスダイブ)」で澤田様にもご登壇いただき、一緒にお話しさせていただいた取り組みです。HIS様では店頭の旅行予約時の接客時間が大体2時間くらいかかっているとお聞きし、AIを活用する仕組みを構築しました。ご来店前にお客様がHISのWebサイトやアプリ上でどんな動きをしているかを生成AIにサマリー(要約)を作成させ、「前日にハワイを見ているが温泉やヨーロッパも検索している」「日程は9月1日から1週間程度で予算は20万円前後」といった情報を店頭スタッフの方に渡す取り組みです。接客時間の短縮や、若手スタッフのコンバージョンレート(成約率)向上といった効果が出ています。
さらに2026年のX DIVEでは、HIS店舗での実証実験の取り組みを発表しました。店頭での会話内容を録音・文字起こしし、AIアシスタントが確認事項の指示を行い、最終的に該当商品のレコメンド(おすすめ)を業務端末上に出す仕組みです。個人情報がAIの学習に利用されることを防止するため、会話データ等をサーバーに渡さず端末上(エッジ処理:手元の端末側で行うデータ処理)で処理を実行する取り組みを行っています。

村杉:一番初めの「KARTE」の部分は来店予約のお客様の動向を可視化するツールで、今回のものは今その場で会話しているお客様とのやり取りを可視化するツールですね。

桑野:「KARTE」はデジタル上の顧客体験を可視化することに長けたプロダクトですが、実際の業務では店頭での会話や関係構築が圧倒的に大事です。Webやアプリで情報を取得して店頭で申し込みたい方や、店頭でコミュニケーションを取ってWebで購入したい方など、混在してきていると理解しています。

村杉:澤田さん、従来のHISの接客における課題や、このシステムを導入する決め手はどういうところにあったのでしょうか。

澤田:事前にヒアリングができていれば準備や計画ができます。コンサルタントの提案力向上やお客様の体験価値向上に繋がり、業務も効率化され両者にメリットが生まれます。店頭でヒアリング以外のコンサルティング力を上げていくことが大事だと思っています。

村杉:導入後の効果についての報告はお聞きになっていますか。

澤田:1つ目はWebサイト上でのパーソナライズ精度向上によるユーザビリティの改善、2つ目は接客クオリティと効率の双方の向上です。相談予約ダッシュボードで閲覧履歴を見られるため、ゼロから紹介する接客より効率的で要望に沿った提案ができるようになったとの声があがっています。相談予約利用ユーザーの成約率は導入前と比較して5ポイント上がりました。

村杉:音声のやり取りのデモンストレーションは実証実験中とのことですが、全店舗に拡大した際にどのような効果が生まれるとお考えでしょうか。

桑野:確認作業以外の「なぜその旅行を計画しているのか」のヒアリングや関係構築などのパーソナライゼーションが大事です。AIやテクノロジーで確認作業を効率化し、人とのコミュニケーションに注力していただくことが大事だと思っています。

澤田:CRM(顧客管理システム)も組み合わせてオンライン上でパーソナライズし、潜在的な需要やニーズの先にあるチャンスをつかめると、コンバージョン(成約)率や体験価値がさらに上がると考えています。

桑野:夏の沖縄家族旅行でも、海のレジャー、星空鑑賞や子どもとの生き物観察など様々な目的があります。何をしに沖縄へ行くのかまで深掘りすることが、心躍る体験の提供に繋がっていくと思っています。
従来のWebやアプリ接客はデモグラフィック情報(年齢・性別などの属性データ)をベースにしていましたが、現在は顧客のコンテクスト(背景や文脈)を抽出し業務に活用するプロジェクトを進めています。例えば「お母さんは旅先で疲れたくない」「お父さんは出費が気になる」「長男の小学校進学前の最後の夏休み」など、一つの家族の旅行機会でも多様な条件や心理といったコンテクストが存在します。従来の条件検索に加え、その家族のコンテクストに沿ったレコメンド動画のような機能を取り入れることで、直感でワクワクする旅を見つける体験や、パーソナライズされた招待状メールの配信、AIによる旅程生成やアルバム作成などのアイデアを一緒に進めています。

ーAI・テクノロジーがもたらす働き手のサステナビリティ

村杉:AI等の導入により店頭での成約率が約5ポイント向上するといった成果が出ています。業績面での貢献にとどまらず、働き手のサステナビリティという観点について、澤田さんはどのようにお考えでしょうか。

澤田:例えば10時間かかっていた業務がAIやシステムによって1時間で終えられるようになれば、残りの9時間を自分が本当にやりたかった創造的な仕事に充てることができます。それによって週休3日や4日といった新しい働き方の実現可能性も広がります。さらに、定常業務が減って社会全体の可処分時間が増えれば、旅行に出かける機会や時間が増え、旅行業界全体にとっても非常に明るい未来をもたらすと予測しています。だからこそ、ルーティンワークはシステムに任せ、人間はよりクリエイティブな業務に専念できる環境を整えることが大切だと考えています。

桑野:業務効率化のその先において、AIやテクノロジーを活用してHISの旅行を選んでいただいているお客様の深層心理や感情を捉えることが重要です。それらをベースとした質の高い接客や提案を行うことが、他社にはない強固な競合優位性につながると考えています。

澤田:現在のAI活用は知識の拡張や質問への回答ツールといった段階ですが、今後は指示を組み合わせて複雑な業務や行為を自律的に実行するフェーズへと進化していくでしょう。この大きな変化の波に対して、前向きに飛び込んでいく姿勢が極めて重要です。

桑野:弊社のミッションは「データによって人の価値を最大化する」です。データを使って人間の創造性を活かし、仕事そのものを楽しんでもらうこと、そして顧客体験をより良くしていくこと。AIをうまく活用して人の可能性を最大限に引き出す状態を作ることが、私たちの重要な使命であると感じています。

ーAIとテクノロジーが切り拓く、HISのサステナビリティと未来

村杉:HISでは"「心躍る」を解き放つ"というパーパスや中期経営計画において「BEYOND」というスローガンを掲げています。これからのHISのサステナビリティと未来への想いについて、お聞かせいただけますでしょうか。

澤田:企業のサステナビリティ(継続性・永続性)の鍵を握るのは、まさにAIとテクノロジーであると考えています。HISが保有する独自のデータを蓄積・活用し、ベンチャー企業のような発想とスピード感を持って独自のAIビジネスモデルを構築していくことが、会社の持続的な成長に直結します。また、気候変動や自然災害といったリスクに対しても、AIやデータを駆使することで事前の予測や対策に役立てることが可能だと思います。こうした取り組みをスピーディーに推進するため、社内に「AIイノベーション本部」を新設しました。

桑野:テクノロジーが目まぐるしく変化する中で、まずは試してみて高速で検証を回していく姿勢が不可欠です。単に既存の旅行商品をパッケージ化して販売するだけでなく、人ならではの創造性を盛り込んだ新しい価値を提供していくスタートを切ることが大切だと感じます。

澤田:AIを活用するにあたっては、使う人間がしっかりとした倫理観や人間性を持って業務に臨むこと(ガバナンス)や、AIの悪用に対する防御力を高めることにも同時に取り組む必要があります。お客様の潜在的なニーズに応える優れた体験価値と、クリエイティブなAI商品・サービスを創出していきたいと考えています。

村杉:AI・テクノロジーの活用により、旅行業の未来がより明るいものとなり、新しい働き方の可能性も大いに広がっていくのではないかと、私自身も「心躍る」思いでお話を伺うことができました。お二方、本日はどうもありがとうございました。