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AIでゴルフの未来を変える。「Good Shot」誕生の舞台裏と挑戦し続けることの大切さ

2026/08/21

社員インタビュー
新規事業

ゴルフ上達に欠かせない、スイングフォームの確認。しかし、コース内での撮影は、スロープレー(進行遅延)を引き起こす課題がありました。「ゴルファーがよりプレーに集中し、感動を共有できる環境を作りたい」。自身がゴルファーだからこそ、抱いた純粋な思いを原動力に熱意を持って推進してきたプロジェクトが、ゴルフカート搭載型AI自動撮影システム「Good Shot(グッドショット)」です。旅行会社の枠組みを超え、新規領域へ挑んだ西宮卓史さん。プロジェクト立ち上げの舞台裏にある葛藤や、困難を乗り越え挑戦し続けるマインドの源泉について話を聞きました。

西宮さんがHISに入社したきっかけと、かつてのゴルフとの関わりについて教えてください。

私がHISに入社したきっかけは中学の修学旅行の思い出にあります。当時、自分で行程を組んでスケジュールを企画するのがとても楽しく、ワクワクした気持ちが心に残っていました。就職活動でHISの採用情報を見つけ、ここだと思って応募しました。配属された国内旅行部門は、当時HISでは主力事業ではありませんでしたが、だからこそ伸びしろがある領域だと思いキャリアをスタートさせ、営業や沖縄専門店の立ち上げなど一貫して経験を積みました。

実は、私にとってゴルフは仕事以前から深く関わってきたスポーツです。親の影響で始め、高校3年間はプロを目指してゴルフ部に所属していました。しかし、プロの世界の厳しさを痛感し、高校卒業と同時に一度は完全にゴルフから離れてしまいました。社会人になってから先輩に誘われて再開したのですが、そこで趣味として純粋に楽しむゴルフに出会いました。その後、「ゴルフに恩返しがしたい、自分にできることはないか」と考え、プレー人口の減少という業界課題に向けて、ボランティアで新規ゴルファーの創出活動を行っていました。その想いが、のちに新規事業に挑戦する大きなきっかけになったと思います。

どのような経緯で社内起業制度に挑戦し、現在の「Good Shot」のアイデアにたどり着いたのでしょうか?

コロナ禍で外出機会が減り、まとまった時間ができた際に、「この時間を活かしてゴルフで何か自分にできることはないか」と考えたのが最初のきっかけです。そこで見つけたのが社外のアイデアプラットフォームでした。

最初は「2歳から始められるスナッグゴルフ※のクラブ販売」を提案しましたが、あえなく不採用になりました。しかしその後、同じプラットフォーム上で選考に進んでいた「自動撮影システム」の推進メンバー募集を見て参画しました。    
当時の提案は「ゴルフ場のティーイングエリア(1打目)とグリーン(最終打)に定点カメラを置いて動画を制作する」というものでした。しかし、全ホールにカメラを設置するのはコスト面でハードルが高く、また従来の撮影サービスを単純に自動化するだけではない、何か新しい体験価値を作り出したいと考えました。そこでゴルフ経験者の視点から、「プレイヤーと一緒に移動するゴルフカートにカメラを搭載すれば、これまで撮れなかった躍動感のあるスイングが撮影できるのではないか」と提案しました。これが「Good Shot」誕生の第一歩でした。

その後、そのアイデアの権利期限であった2年が経過するのを待ち、正式に許可をいただいた上で、HISでの事業化を目指して2024年に社内起業制度「HIS Start-up Program」にエントリーしました。経営陣へのプレゼンテーションやPoC(概念実証)を経て、2026年1月に「Good Shot」は正式リリースを迎えることができました。

「Good Shot」の仕組みと、従来の撮影方法に比べた革新性について聞かせてください。

「Good Shot」は、ゴルフカートに搭載したカメラが打つ人をAIで自動認識して追尾し、プレー中のスイング動画を自動で撮影・編集するシステムです。
従来の撮影は、同伴者がスマートフォンで行うのが一般的でした。しかし、ゴルフ場には「プレー進行(プレーファスト)」のマナーがあり、撮影に夢中になって後続組に迷惑をかけることはプレイヤーの強いストレスになります。また、2打目以降はプレイヤーがバラバラの場所に散らばるため、同伴者による撮影自体が物理的に困難になります。「Good Shot」なら、カートから自動で撮影してくれるため、進行を遅らせてしまっているのではないかというストレスがありません。さらに、AIにより動作や音声を判別し、動画を自動編集してハイライトにまとめられる点も強みです。

ゴルフカートに取り付けたAI自動撮影カメラでプレーヤーを撮影

撮影された動画は、ユーザーにどのように届き、活用されているのでしょうか。

プレー終了後、自動撮影した動画データをサーバーへアップロードし、AIが自動でプレーをダイジェストに編集してお渡しします。音声はプライバシー保護の観点から周囲の会話が鮮明に聞こえすぎないよう、心地よいBGMを重ねています。

活用法は大きく3つあります。
1つ目は、純粋な「記念・エンターテインメント」です。初めてのラウンドや3世代でのプレーなど、スマホを取り出す余裕がない場面でも最高の思い出を動画で残せます。
2つ目は、「技術向上(スコアアップ)」のツールです。練習場と違い、コースは起伏に富んでいます。そのスイングの違いを客観的に可視化することで、自分のフォームの確認ができます。最初はカメラを意識しがちですが、数ホールで存在を忘れるため、自然体のスイングが撮れる点も強みです。実際にお客様から「イメージとのギャップを修正でき、ベストスコアが出た」という嬉しい報告も届いています。
3つ目は、当初はあまり想定していなかったゴルフ場の「施設管理・防犯」や「人材育成」としての活用です。打球事故や盗難など安全管理・防犯の用途や、優秀なキャディさんの動きを録画した新人教育用の研修動画としての活用です。ゴルフ場が抱えるリスク管理や人材育成という課題に、期せずしてマッチした形になりました。

旅行販売(B2C)から法人営業(B2B)への挑戦。最も大きかった「壁」と、それをどのように乗り越えましたか?

これまでは、旅行販売という個人(B2C)向けがメインでしたが、ゴルフ場という法人(B2B)への営業は全く異なる世界でした。
最も大きな壁は、ゴルフ業界特有の「新しい技術への慎重な姿勢」と「自らのB2B営業スキルの不足」でした。「カメラでプレーを撮影する」と伝えただけで、プライバシーへの警戒感などから「うちにはいらない」と断られることも多々ありました。また、個人向け窓口にいた私には契約交渉や事業計画作成の知識がなく、当初はパワーポイントでの資料作成すらままならない状態でした。

乗り越えられたのは、社内のサポートと営業マインドの変革があったからです。
「HIS Start-up Program」事務局が何度も事業計画のブラッシュアップに付き合ってくれ、法務や経理、システムなど様々な部署が連携して助けてくれました。

営業活動においては、現場へ足を運ぶ「泥臭い活動」を徹底しました。1回断られても、上司の「何度もアプローチして顔を覚えてもらうのは当たり前。熱意が伝われば話を聞いてくれる」という言葉で意識が変わりました。一都三県のゴルフ場に、1件1件架電営業でアポイントを取り、訪問を重ねていく中でご縁をいただき、支配人会に参加させていただいて説明を行ったり、コンペで実際にカートにカメラを取り付けて体験してもらう試験運用を重ねました。この過程で、表情の作り方や声のトーン、相手の本音を引き出すコミュニケーション能力が格段に向上したと思います。

「Good Shot」が描く次なる未来図を教えてください。

まずは、関東に次いでゴルフ場が多い関西圏への進出です。すでにお問い合わせもいただいており、サポート体制の構築など準備が整い次第進めていきます。また、旅先でのかけがえのない思い出を映像として残せることは、お客様にとって非常に価値があると感じています。夏の北海道や冬の沖縄といった、季節に応じた旅先でのゴルフ需要にあわせ、旅行会社としてのリソースを最大限活かしながら、商圏拡大を狙っていきます。旅行事業と連携した、インバウンド向けパッケージ商品への組み込みや、法人コンペでの利用促進も計画中です。

将来的には、ハワイやグアム、アジア圏などの海外リゾートへの展開も視野に入れています。旅行先の美しい景色の中でゴルフを楽しんでいる瞬間を動画で持ち帰っていただければ、HISらしい価値創造に繋がると確信しています。

慣れ親しんだ環境から一歩を踏み出し、新しいことに挑戦しようとしている方にメッセージをお願いします。

私は長年国内旅行部門にいましたが、常に頭のどこかで「新しいことにチャレンジしたい」とアンテナを張り続けていました。もし挑戦することを迷っている方がいるなら、「チャレンジして失敗したって、命までは取られない」と伝えたいです。
失敗した経験そのものが、確実に自分の財産になります。私も最初のスナッグゴルフの企画は通りませんでしたが、諦めずにアンテナを張り続けていたからこそ、今の「Good Shot」があります。

人生の時間は有限です。やりたいと思ったとき、興味がある領域に出会った瞬間に、まずは小さいことでもいいからアクションを起こしてみてください。
恐れずに一歩を踏み出し、失敗しても諦めず挑戦し続けることで、必ず新しい道が開けていくはずです。

※スナッグゴルフ(SNAG Golf)・・・アメリカのプロゴルファーが開発した、子供や初心者でも安全に楽しくゴルフの基本を学べるスポーツ。的にボールを貼り付けて得点を競います。

株式会社エイチ・アイ・エス
新規事業統括本部  未来創造室  ゴルフソリューションチーム
西宮  卓史

2004年入社。
国内旅行部門にて旅行コンサルタントに長年従事し、沖縄専門店立ち上げなどにも関わる。2024年、社内起業制度「HIS Start-up Program」への挑戦を機に、新規事業「Good Shot」を立ち上げ、現在に至る。

※記事の内容はインタビュー当時のものです。