熊本地震復興10年の歩みを誇りに。熊本未来アクション「誇歩~ホープ~」
最大震度7を記録した熊本地震から今年で10年となることを機に、熊本県の交通や商業施設を運営する九州産業交通ホールディングス(以下、九州産交グループ)では、地域貢献プロジェクトとして熊本未来アクション「誇歩〜ホープ〜」を実施しました。復興の記憶を次世代につなぎ、未来に向けて歩み続ける地域の方々を支える地元企業としての取り組みについて、プロジェクトを担当する九州産交プランニングの迫口さんに話を聞きました。
まずは、熊本未来アクション「誇歩〜ホープ〜」について概要をお伺いします。
熊本未来アクション「誇歩〜ホープ〜」は、九州産交グループが、熊本地震発生から10年という節目を機に立ち上げた地域貢献プロジェクトです。このプロジェクトは、震災の記憶を振り返るだけではなく、困難な中でもたゆまず歩み続けてきた熊本の人々が、誇りを持ち、地域への想いをさらに深めていただくことを目的としています。熊本の人々が地域をより好きになり、熊本の未来に対して希望を抱けるような機会を創出したいという願いを込めています。
10年という節目の年に地元企業として何ができるのかと検討を開始した当初は、これまで支援してくださった県外の方々に対する「ありがとう」という感謝のメッセージや、震災当時を振り返るようなやや重いテーマで考えていました。しかし、プロジェクトを担当するグループ各社の方々と話し合う中で、各社から「県内の人に喜んでほしい」「未来に向けて熊本の良いところを再発見してほしい」といった前向きな意見が多く寄せられました。そこで、プロジェクトの対象を県民へと向け、メッセージを「希望」や「地元愛の深化」へと大きく方向転換しました。
「ホープ」という名称は、「希望」という意味に加え、これまでの自分たちの復興への歩みを「誇る」と、未来へ「歩む」という漢字を組み合わせた「誇歩」という造語で名付けました。熊本の人たちの「地元が好き」という強い結束力こそが復興の原動力になり、「今までの自分たちの歩みを誇ることで、これからの希望が生まれる」というメッセージを伝えたいという強い想いがあります。

具体的には、今年3月末~4月にかけて、益城町の子どもたちが描いた絵をラッピングしたバスの運行、付随して、描いていただいた絵の展示会、益城・阿蘇の特別ツアーの催行、熊本発ペーパーアート「スーパーフラワー」とコラボレーションし子どもたちとファッションショーや商業施設での熊本フェアなど実施しました。
プロジェクトは九州産交グループ各社が連携し実施されていますが、苦労した点はありますか。
九州産交グループは、公共交通、商業施設、旅行など、多岐にわたる事業を展開しています。そのため、プロジェクトを一つにまとめる上で難しかったのは、事業ごとの「制作工程や告知タイミングの違い」をうまくコントロールし、調整することでした。例えば、旅行事業であれば参加者を集めるために早い段階での告知が必要となりますが、商業施設のイベントであれば、その時期に合わせた直近での告知が効果的です。このように、各社がやりたいことや宣伝したいタイミングがバラバラであったため、これらを統括し進行管理を行うことに配慮しました。
一方で、グループ全体でこのプロジェクトに取り組むことには非常に大きな意義がありました。普段、商業施設の担当者は「ファッションを売る」、旅行の担当者は「県外へ人の移動を助ける」といったように、個々の事業に意識が向きがちです。しかし、九州産交グループの根底には「街づくりに貢献する」という共通の意識があります。この横断的なプロジェクトを共に進めることで、全社員が「熊本の街づくりに貢献している」という意識を改めて再認識するきっかけになったのではないかと感じています。
企画の一つであるラッピングバス「ホープ・ライナー」について概要をお伺いします。また、実際に子どもたちの絵を見て、どのようなことを感じましたか。
ラッピングバス「ホープ・ライナー」は、熊本地震で甚大な被害を受けた益城町の小学生と保育園児、計173名にご協力いただき、子どもたちが描いた絵をバスにラッピングした企画です。今年の3月、復興のシンボルである県道熊本高森線の4車線化全線開通に伴う式典にて初お披露目され、益城町と熊本市をつなぐ路線バスとして九州産交バス木山営業所により運行されています。子どもたちに絵を描いてもらうにあたり、益城町役場の方ともアイデアを出し合い、「熊本の好きなところ・夢」というテーマを設定しました。子どもたちの絵そのものが未来や希望になると考え、テーマを絞りすぎず、自由さを奪うことのないよう、そして書きやすいよう注意しました。バス車体のデザインを組む時間は、子どもたちの描いた純粋で可愛らしい絵に大変癒されました。

益城町でのお披露目イベントに、参加してくださったお子さんも来てくださり、自分の描いた絵をご家族に嬉しそうに紹介している様子を間近で見ることができ、純粋に「喜んでほしい」と願って行った地域貢献活動が実際に形となり、街の人々の喜びに直結していることを実感し、大きな感動を覚えました。

震災から10年間ですが、地域インフラを支える企業として困難だった時期や、それを乗り越える原動力となった出来事があれば教えてください。
震災当時働いていた方から伺ったお話です。震源に近い益城町の木山営業所に所属するバスが、倒壊した建物の瓦礫などによる通行止めで帰庫できなくなり、営業所にほど近い、町営体育館の駐車場に一時避難する事態となりました。その際、家屋に被害を受け避難場所を失った方々に対してバスを開放し、一時的な避難所として活用していただいたそうです。
震災からの復興の原動力となったのは、熊本の人々が持つ前向きな明るさとたくましさです。グループ社員と当時の話をしていても、「悲しかった」「辛かった」と語る人は少なく、「あの時は大変だった」と明るく語る人が多いと感じました。熊本の人特有の負けん気の強さやピンチを乗り越える力強さが、復興への大きな力となりました。 個人的には、震災当時は福岡で働いており、地元・熊本が被災する中で何もできないことに心苦しさと漠然とした不安に涙した経験があります。この時の「地元のために何もできなかった」という悔しい思いが原動力となり、社会人10年目の節目に熊本へUターンし、九州産交グループに入社するきっかけにもなりました。

プロジェクトによる収益の一部を次世代の支援や地域の活性化のために寄付されるとのことですが、どのような街を未来に残していきたいとお考えですか。
プロジェクトの収益の一部を次世代の支援に寄付する背景には、熊本を単なる「地方」という枠に留めたくないという強い思いがあります。地方であっても最先端の文化や活動を体験でき、アニメなどのポップカルチャーも含め、都市部に行かずとも多様なイベントを楽しめるような、文化活動が優れている魅力的な街にしていきたいと考えています。
私自身、熊本の街に育てられ、様々な人から教えを受けた恩返しをしたいという気持ちがあります。これからの未来を担う子どもたちに対しても、この街で様々な最先端のものに触れ、豊かな経験を積み、「自分はこの街に育てられた」と感じてほしいと願っています。そして、将来県外へ出たとしても、「この街が好きだから、いつかまた帰ってきたい」と思ってもらえるような、愛着と誇りを持てる街を九州産交グループとして残していきたいと考えています。
最後に、熊本に暮らす皆様が郷土を誇りに思い、笑顔で未来へ歩みを進めるために、九州産交グループとして今後どのような役割を果たしていきたいかお聞かせください。
現在、熊本は台湾積体電路製造(TSMC)の工場設立や、国際線増便に伴いインバウンドが増加傾向にあり、九州産交グループの売上においてもインバウンド需要が占める割合は着実に高まっています。今後もインバウンドへの取り組みは注力していく方針ですが、一方で、インバウンドに特化しすぎてしまうと、地元の方や国内旅行者の足が遠のいてしまう懸念があります。世界中の人々から愛されるグローバルな魅力を持つと同時に、地元・熊本の人や国内の人々からも引き続き愛され、好きになってもらえるようなバランスの取れた街づくりとブランディングを進めていくことが、九州産交グループの重要な役割であると考えています。
私は普段、SAKURA MACHI Kumamotoの広告を担当しており、施設内の広告企画やデザイン制作、季節のイベント企画など、オフィスワークを中心に行っています。これまでは広告主までしか見えない業務でしたが、今回のプロジェクトを通じて、実際にサービスを利用するお客様の「生の声」や「笑顔」を間近で見るという貴重な経験を得ました。顧客の反応を直接肌で感じることは、「自分のデザインに何が足りなかったのか」といった実務的な気づきを与え、自身の技術向上への強いモチベーションに繋がっています。今後もこのような地域貢献活動を通じてお客様の声に耳を傾けながら、熊本に暮らす皆様が郷土を誇りに思い、笑顔で未来へ歩めるようなサービスを創り出し、提供し続けていきたいと考えています。
SAKURA MACHI Kumamoto(サクラマチクマモト)
熊本城の城下町である桜町にて、ファッションやコスメ、レストランなどが入る商業施設とシネマコンプレックス、イベントホール、ホテルで構成される大型複合施設。九州産交ホールディングス傘下の九州産交ランドマークが運営する。

九州産交プランニング株式会社
迫口 あかね
2024年入社。東京・福岡にて広告制作会社・広告代理店を経験後、故郷・熊本の九州産交プランニングに入社。商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」をはじめ、九州産交グループ各社の広告事業に携わる。
※記事の内容はインタビュー当時のものです。