光と水の物語を紡ぐ
ラグーナイルミネーションが頂点に立つまでの軌跡と挑戦
株式会社ラグーナテンボスは、昨年11月に「International Illumintation Award2025(通称:IIA)」にて、イルミネーションイベント部門 優秀技術賞第1位を受賞しました。前年の2位という結果に甘んじることなく、「進化しなければ1位は獲れない」という強い覚悟が生んだ快挙です。幾多の技術的ハードルを乗り越え、オープン直前まで続けられた挑戦の裏側とその想いとはどういったものだったのか。イルミネーション事業の原点から今回の受賞に懸けた情熱まで、株式会社ラグーナテンボス 中川絢也香さんに話を聞きました。
ラグーナテンボスが本格的にイルミネーションに注力し始めたきっかけと、独自の「水」へのこだわりについて教えてください
ラグーナテンボスが本格的にイルミネーションに注力し始めたのは、HISグループに加わった2014年が大きな転換点となりました。
ラグナシアは海辺に位置するパークですので、冬場は強い潮風に見舞われ、冷え込みも厳しく、お客様の足が遠のきがちな時期でした。しかし、夏のプールの時期の集客だけでは今後の成長幅が狭くなると感じ、クリスマスシーズンを軸にテーマパークらしい冬の夜にしか作れない感動を届けようと決めたのが始まりです。
当時、グループ会社であったハウステンボスの成功事例も参考にしましたが、私たちはラグナシアにしかない価値を追求しました。私たちの最大の武器は、園内中央に広がる広大なプールです。通常、冬のプールは活用が難しい「デッドスペース」になりがちですが、私たちはそこを巨大なキャンバスに見立てました。水面に光を反射させることで、輝きを何倍にも増幅させることができると考えました。
「海のテーマパーク」としてのアイデンティティを大切にし、水と光が織りなす圧倒的な没入感を目指しました。
2年前には、雲海とオーロラの演出を駆使して「天空に宿る生命(いのち)の光」を表現する「ツリーインザスカイ」を導入しましたが、日中もミストを出すことで昼夜問わず楽しめるアトラクションへと進化させることができました。単に飾るだけでなく、場所の価値を最大化させることが私たちの拘りです。

前年のアワードでは2位でした。そこから「1位」を勝ち取るために、チームでどのようなリベンジを誓ったのでしょうか
2017年の「第5回イルミネーションアワード」で総合エンタテインメント部門第8位・プロフェッショナルパフォーマンス部門第9位として初受賞し、その後、2018年に10位、2020年にはプロフェッショナルパフォーマンス部門5位、2022年には4位と、少しずつですが着実に順位を上げてきました。2023年に「インターナショナルイルミネーションアワード」へと名称が変わってからも、優秀エンタテインメント賞で第3位、翌2024年には第2位と、頂点まであと一歩のところまで来ていました。
2位という評価は光栄でしたが、「次は1位を目指して頑張ろう」とチームでリベンジを誓いました。
全国には広大な敷地を誇る競合施設が多々ありますが、面積や電球の数だけで勝負しても勝ち目はありません。限られたエリアの中で「いかに演出を工夫できるか」、そして「いかに最新の体験を提供できるか」という点に絞り、戦略を練り直しました。
スタッフ一人ひとりが、自らの役割において「世界一のクオリティとは何か」を問い直し、従来のイルミネーションの枠組みを超えるような新しい仕掛けを模索しました。その結果、「見る」イルミネーションだけではなく、お客様からの評価が高い360度3Dマッピングとキャストのパフォーマンスを組み合わせたエンターテインメントショー「ネージュ」などの、お客様が物語の主役になれる「体験型」へのシフトを加速させました。このラグナシアでしか見ることができないイルミネーションを実現させようという「攻めの姿勢」こそが、今回の原動力となりました。
今年初開催の「ドローン演出」は前代未聞の試みだったそうですが、導入にあたっての苦労を教えてください
水上ドローン8台と空中ドローン8台、計16台を自動制御して1つのショーを作り上げるという、エンターテインメント業界でも類を見ない挑戦に踏み切りました。固定された電飾と違い、光が3次元で縦横無尽に動き回ることで、視界のすべてが演出空間へと変わります。しかし、その裏側はまさに「戦い」でした。
航空局への申請では、前例のない複雑な演出内容ゆえに安全確保のため、ステージの向きやお客様の観覧場所の変更を何度も求められ、演出プランを一から書き直すこともありました。さらに、開発段階ではシステムの不具合が多発しました。GPSで制御している複数のドローンを水中と空中で同期させるのは極めて難易度が高く、わずかな設定の狂いも許されない、非常に繊細な調整の連続でした。実は、完璧なシンクロを確認できたのはオープン当日の明け方だったのです。極寒の夜明け、スタッフ全員で全ての機体が描いた通りに動いた瞬間を見たときには、寒さも忘れ感動もひとしおで、これまでチーム一丸となり、試行錯誤を続けてきてよかったと思いました。こうした泥臭い努力の積み重ねが、技術賞1位という形で報われました。

最新技術「Twinkly Pro」を採用した「マリンファンタジア」など、緻密な演出が創り出す没入感についても詳しく聞かせてください
「Twinkly Pro」は、一つひとつのLEDの位置をスマートフォンでスキャンし、3次元的にマッピングするイタリア発の技術です。これにより、イルミネーションドームの光がまるで巨大なスクリーンのように滑らかな映像を映し出し、魚やイルカが泳ぐ海中世界を再現しました。これは一度設置すれば映像を自由に入れ替えられるため、夏はナイトプール用に演出を変えるなど、持続可能な運用を可能にしている点も大きな強みです。
また、豪華な演出だけでなく、しっとりとした美しさも大切にしています。例えば、ジョイアマーレの浜辺に設置した「光の花手水(はなちょうず)」です。これは日本の伝統的な美意識とイルミネーションを融合させたもので、水面にゆらめく光を愛でるという、ラグナシアならではの体験を形にしました。最新技術での驚きと、こうした心に響く情緒的な演出の両方があることで、多角的な感動を提供できると考えています。

企業理念である「感動提供」の追求と、長年愛されてきたシンボルの継承についてはどのようにお考えですか
企業理念である「感動提供」とは、来場されたお客様の思い出に深く残ることだと考えています。ラグナシアという場所が持つポテンシャルを活かし、他にはない驚きや没入感のある体験を創り出すことなどといった挑戦の積み重ねが、結果としてお客様の感動に繋がると信じています。
例えば、お子様がキャラクターと一緒に園内の光を灯す点灯式「ライトアップセレモニー」は、単なるイベントではなく、そのご家族にとっての忘れられない1ページになります。また、キッズエリアのアトラクションに乗りながらイルミネーションを楽しめる演出など、全世代が主役になれる仕掛けを随所に散りばめています。
また、新しいものを作るだけでなく、10年以上愛されてきた「幸運のレインボーアーチ」などの既存のイルミネーションについても、老朽化を理由に終了するのではなく、次なる10年へと継承するべくリニューアル計画を進めています。ラグナシアのシンボルとなる建物の魅力と、最新の光を組み合わせる。これこそが、他にはないラグーナらしい風景を守り、さらに進化させていく方法だと考えています。既存のものを大切にしながら、常に新しさを取り入れることで、パーク全体の価値を高めていきたいですね。

「1位」という称号を経て、これからのラグーナテンボスが描く未来図をお聞かせください
今回の受賞は非常に誇らしいですが、私たちは決してここで歩みを止めません。今後は、イルミネーションだけでなく、特定のキャラクターやアーティストを応援する『推し活』を楽しむ大人層、あるいはインバウンドのお客様にも響く企画も強化していきます。最新技術を活かして、多様なニーズに応える新しい演出の形を模索していきたいと考えています。
2025年シーズンのイルミネーションは幕を閉じましたが、私たちの挑戦が止まることはありません。HISグループのバリューである「冒険と挑戦」を胸に、すでに来シーズン、そしてその先を見据えた新しい驚きの仕掛けを練り始めています。
ラグーナテンボスは、いつ訪れても「新しい感動」がある場所であり続けたい。光と水、そして最新テクノロジーが織りなすラグーナならではのエンターテインメントが、次にどのような進化を遂げるのか。ぜひ、これからのラグーナテンボスに期待していてください。

株式会社 ラグーナテンボス
中川 絢也香
2012年入社。
企画部のメンバーとして、テーマパーク「ラグナシア」で開催するイベント企画業務、広報宣伝業務に従事。2024年よりイルミネーション企画を担当。