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スタディツアーでカンボジアに学校を建設 継続的な教育支援と参加者の人生にもたらす変化

2026/03/17

社員インタビュー
人権の尊重 受賞 子どもの教育 平和と公正

観光の枠を超え、現地の事情や課題を知り学びを得ることを目的としたHISスタディツアーにおいて、2017年より10年にわたり継続している「カンボジアで小学校建設ボランティアツアー」。教育格差や歴史的背景から学校に通い続けることが困難なカンボジアの子どもたちのために、参加者が現地の方と共に学校建設に携わる本ツアーについて、スタディツアーデスクの森田さんに話を聞きました。

まずは、「カンボジアで小学校建設ボランティアツアー」について、概要と企画に至ったきっかけを教えてください。

このツアーは、カンボジアの農村部で参加者が現地の方と協力しながら、実際の学校建設に携わるスタディツアーで、2017年から催行し今年で10年目を迎えます。建設工事が行われている期間中に参加し、レンガ積みやコンクリートで固めたり、ペンキを塗ったり、建築行程のどこかを担っていただくことになります。建設作業だけでなく、過去に建設した学校を訪問して、そこに通う子どもたちと交流したり、情操教育を目的とした課外授業を行ったりするプログラムも含まれたツアーです。

企画のきっかけは、元々カンボジアの孤児院でボランティアをするスタディツアーに大きな需要があったことです。その一方で、カンボジアの農村部では貧困や教育設備が整っていないことが原因で学校に通えない子どもたちが多く存在するという現状も認識しており、これらの問題に対応する新しい取り組みを作りたい、という思いが生まれました。そこで、現地で教育支援を行っている団体を探し、継続的に学校建設の計画・実績を持つNPO法人「HERO」に声をかけさせていただき、教育に焦点をあてたツアーを作成することになりました。一度学校を建てて終わりにするのではなく、子どもたちが通い続けられる環境や教師も学べる環境を継続して支援したいという強い思いが、このツアーの根幹にあります。

カンボジアが抱える教育の課題や都市部と農村部の格差についてお伺いします。

カンボジアの教育は、歴史的背景や経済状況が複雑に絡み合った課題を抱えています。カンボジアの義務教育は小学校から中学校までの9年間で公立学校は無償です。政府の取り組みにより小学校の就学率は95%まで向上しましたが、最終学年までの修了率が低いという深刻な課題があります。ここには都市部と農村部の大きな格差が存在します。都市部では大学進学も珍しくありませんが、農村部では「家や畑の仕事の手伝いがある」「集落から学校が遠く通学に時間がかかる」といった理由で、途中で学校を離脱してしまう子どもが多くいます。背景には、約50年前のポル・ポト政権時代の影響が色濃く残っています。当時、教育は格差を生むものとして否定され、知識人が大量虐殺されました。その時代を生き抜いた方々が現在の親世代となっているため、教育の重要性が理解されず、勉強して良い就職につなげるよりも、家の仕事を手伝ってほしい、という考え方が根強く残っています。また、教育環境そのものにも課題があります。学校や教師の数が不足しているため、午前と午後で学年を分ける「2部制」での授業が一般的で、子どもたちは1日を通して学ぶことができません。義務教育のカリキュラムは知識の丸暗記に偏りがちで、体育や美術といった情操教育や、理科の実験などを行う環境も整っていません。さらに、知識人が粛清された歴史から教師を目指す人が少なく、教師の給与水準も低いため、生活のために副業をせざるを得ない現状があり、教師の質や意識レベルにばらつきが生じています。

ツアーに参加された方からの反響など教えてください。

参加者の多くは、出発前の「可哀想な状況を助けに行く」というイメージが、現地で180度覆されるという経験をされています。「支援が必要な不幸な状況だと思っていたけれど、皆楽しそうで逆に元気をもらった」という声が非常に多く寄せられます 。日本は経済的に恵まれていますが、カンボジアの人々の温かさや笑顔を見て、自分自身の人生や幸福度を見つめ直すきっかけにもなっているようです 。親子で参加された方からは、言葉が通じなくても子ども同士がすぐに遊び始める姿を見て、「今後子どもが学校でカンボジアについて学ぶ時に、この実体験を必ず思い出してくれると思う。教科書で学ぶ前に実体験として現地を知ることの大切さを実感した」という嬉しいお声もいただきました 。

参加者の層としては、コロナ前は大学生が8割を占めていましたが、コロナ禍以降は社会人やシニア層の参加が増え、学生と半々程度の割合になっています。特にこのカンボジアのツアーに関しては、一人で参加される女性が多いのも特徴です。

建設した学校に通う子どもたちの様子

ツアーにまつわる困難だったエピソードなどお聞かせください。

現地の子どもたちに楽しんでもらおうと、「花火大会」を企画・開催した際のエピソードが特に印象深く、大変な苦労がありました。日本の花火師さんにお願いをして現地に来ていただいたのですが、安全上の理由から日本から火薬を持ち込むことはできません。そのため、現地で花火を調達する必要がありましたが、学校がある農村部では打ち上げ花火を入手することができず、隣国から陸路で取り寄せることになりました。そのための手配や費用が想定をはるかに上回る大変さでした。さらに、打ち上げのための広大な場所の確保や、安全面に配慮した条件面の調整など、花火師さんと密に連携しながら何度も調整を重ねて、実現させることができました。

打ち上げ花火を楽しむ子どもたちの様子

今後、この事業を通じて目指したいこと、挑戦したいことなどはありますか。

第一の目標は、カンボジアでの学校建設支援という現在の事業をしっかりと継続していくことです。カンボジアには学校がまだ足りない地域があり、教育の質やレベルといった課題も多く残されているため、その現状を一人でも多くの方に知っていただく活動を続けていきたいと考えています。将来的には、一度参加して終わりではなくリピーターとして、年数を経て変わっていく学校や村、子どもたちの成長を見守り続けてほしいと考えています 。また、過去に行った花火大会のような、現地の子どもたちに向けた大きなイベントの実施にも再び挑戦したいです。

さらに新たな挑戦として、社会人の女性に向けた「ライトなサステナブルツアー」の企画を進めています。スタディツアーの良さは、グループで参加し、参加者同士で意見を交わすことで「新しい気づき」が生まれる点にあります。しかし、本格的なスタディツアーはハードルが高いと感じる方もいらっしゃるため、例えば「環境問題に先進的な取り組みを行っているバリ島の学校を見学する」といったように、リゾート地で休暇を楽しみながら、気軽に社会問題や環境について学べるツアーを作りたいと考えています。社会人にとって休暇は貴重ですので、そのお時間を使わせていただくならば、「ちょっと良いことを知って、ちょっと良いことをしてきた」と思っていただき、その後の人生にポジティブな影響を感じていただけるようなツアーを提供していくことが今後の目標です。

カンボジアで小学校建設ボランティアツアー

https://study.his-j.com/LP/cam/
2019年ジャパン・ツーリズムアワード、2023年JATA SDGsアワード大賞受賞

株式会社エイチ・アイ・エス
スタディツアーデスク
森田 咲貴

2013年入社。エコ・スタディツアーデスク(当時)にて、トレッキングツアーなどのエコツアーや、海外ボランティアツアーの手配業務や添乗業務に従事。2015年より、単独部署となったスタディツアーデスクに配属となり企画業務を担当。