「コラボルーム世界最多のホテル」としてギネス世界記録™に認定 宿泊を「旅の目的」に変える、「変なホテル」のユニークなコラボルーム戦略
HISホテルホールディングスが運営する「変なホテル」は、2025年9月に『コラボルーム世界最多のホテル』、「Most brand-themed room sponsorships in a hotel chain(ホテルチェーンにおけるブランドコンセプトルーム・スポンサーの最多数」として、ギネス世界記録™に認定されました。(2025年9月19日(金)/コラボルーム 44種類) 「変わり続けることを約束するホテル」をポリシーとして、お客様にワクワクと感動をご提供する「コラボルーム」。宿泊を「旅の目的」に変える、ユニークなコンセプトルーム戦略について、HISホテルホールディングス 遠藤 正巳 さんに話を聞きました。
コラボルームを始めたきっかけと、最も重視された目的についてお聞かせください
新型コロナウイルスの感染拡大は、旅行業界と並び、ホテル業界にも深刻な影を落とし、まさに未曾有の苦境に立たされました。加えて、大手ホテルチェーンに比べ後発の弊社にとって、安定した集客力の確保はかねてからの課題でした。この逆境を乗り越えるため、「お客様の記憶に残る話題性」と「お客様からの強い支持」を獲得できるホテルづくりが急務となったのです。
この挑戦は、「変なホテル」のポリシーである「変わり続けることを約束するホテル」の実現、そして弊社が掲げる5つのコアバリュー「繋がる」「快適」「先進的」「遊び心」「生産性」の追及にも関連しています。
また、弊社はHISグループとして、「オンリーワン」であり「ナンバーワン」と呼べるようなコンテンツを提供することで、「滞在そのものを楽しんでいただきたい」という強い想いもありました。その実現に向けた第一歩こそが、後の「コラボルーム」へと進化する「コンセプトルーム」の企画・推進だったのです。ちなみに、「コンセプトルーム」は特定のテーマやストーリー性を持たせたお部屋であり、「コラボルーム」はアニメ、キャラクター、ブランドなど企業と提携してその世界観をテーマにしたお部屋となります。
2022年7月に「変なホテル舞浜 東京ベイ」と「変なホテル仙台 国分町(現:変なホテルプレミア仙台 国分町)」にて、「恐竜ルーム」が第一号として誕生しました。そして現在(2026年2月)、全国でコラボルーム52種類、コンセプトルーム26種類を展開するまでに至り、戦略が大きな成果を結んでいます。

コラボレーションを選定する基準や、企業との連携、そして企画を進める上でのプロセスについて教えてください
コラボレーション先を選定する基準として、顧客のニーズに合っているか、そして「これがあるからこのホテルに泊まりたい」と思わせる魅力を生み出せるかを最も重視しています。企画の立ち上げは、基本的に弊社から企業にアプローチをかけるケースが大半です。しかし、取り組みが評価されギネス世界記録™に認定されてからは、現在では企業側からも提案をいただけるようになりました。制作プロセスは、企業への声掛けとデザインの打ち合わせからスタートします。比較的早い案件では1ヵ月から1ヵ月半で販売に至ることもありますが、大手企業とのコラボルームの場合、審査に時間を要し、3ヶ月から長いものだと1年半かかった事例もあります。

多くの事例の中から、特に成功しているコラボルームや、お客様に提供したい付加価値についてお聞かせください
単にテーマの世界観を作るだけでなく、滞在中にそのコンテンツに対する知識を増やしていただける機会も取り入れています。例えば「チョコボールルーム」では、チョコボール誕生の1960年代からの歴史を学んだり、チョコボールの持つおいしさ・楽しさを体験していただくことで、お客様の見識を広げる機会を提供しています。チョコボールは歴史が深く、強固なブランディングを持つため、世界観の構築には時間を要しましたが、その分お客様にも支持され、人気のコラボルームのひとつになっています。単なる宿泊を「知的好奇心を満たす学びの場」へと昇華させることで、コンテンツへの愛着をさらに深めていただくことを目指しています。
他にも、「Anker Room」のように、最新製品をお試しいただき、気に入っていただけたら宿泊特典の割引クーポンにてお得に購入できる導線をつけることで、「体験から購買」に繋がる新しい価値も提供しています。Ankerグループの最新製品をお部屋に多数取り揃え、さらにチェックアウトの際に最新のモバイルバッテリーをお土産としてお渡ししています。宿泊を通じて体験し納得してから購入できるこの「試泊購買モデル」は、お客様、企業、ホテル全てに恩恵をもたらす持続可能なビジネスモデルです。これは、企業側にとっては確度の高い販促機会となり、弊社にとっては客室の付加価値を高める差別化要因となっています。他の企業とのコラボルームにおいても、お土産付きを多く展開し、好評を得ています。


宿泊されたお客様からの反応、フィードバックがあればお聞かせください
「とても楽しかった」、「一生の思い出になった」といった口コミをいただくことも多く、中にはお部屋に手書きのメッセージを残してくださるお客様もいらっしゃいます。お客様がそのコンテンツに抱く熱い想いや、人生における大切な瞬間を当ホテルで過ごしていただけたという喜びを、メッセージから強く感じています。
弊社にとって、お客様の「記憶に残る体験」を創出できたことが最大の喜びです。この「記憶に残る力」こそが、弊社が目指す「オンリーワン」なホテルの提供価値だと考えています。
稼働率に関しては、いろいろなコラボルームがありますので、時期やお部屋によりますが、アニメやアイドルといったコアなファンがいるコンテンツに関しては、販売と同時にほぼ満室になることも多いです。また、通常のお部屋を予約されていたお客様に、空室があった場合、コラボルームへのアップグレードのご提案をさせていただくこともあります。コラボルームは、通常のお部屋の約倍の価格設定となっていますが、「せっかくだから是非」と喜んで受け入れてくださるお客様も多いです。これは、お客様が価格以上の価値を認めてくださっている証拠であり、今後も新しい切り口のコンテンツを積極的に取り入れ、ホテルの可能性を広げていきたいと考えています。
地域の企業や施設とのコラボレーションは、地域の観光振興にどのような影響を与えていると感じますか
地域企業とのコラボレーションは、その地域のPRや経済効果に貢献し、「ここに来る目的」の一つになっていると感じています。例えば「侍ルーム」(変なホテル東京 浅草橋・変なホテルプレミア東京 浅草田原町)については、ホテルが立地する台東区の企業である人形の吉徳様との連携を通じて観光産業を盛り上げたい、そして日本人のお客様だけでなく、インバウンドのお客様にも日本の伝統文化をホテルで手軽にお愉しみいただきたいという想いが込められています。こうした取り組みは、地元企業の歴史や魅力を再発見し、遠方のお客様にその地域を深く知っていただくための、最高のきっかけづくりだと考えています。
さらに、地域社会への貢献として、2024年1月1日に発生した能登半島地震の復興支援に関する事例もあります。北陸の銘菓「ビーバー」の販売による寄付を弊社が行ったことをきっかけに、北陸製菓様との繋がりができ、2024年12月に変なホテル金沢 香林坊において「ビーバールーム」の販売が実現しました。
現在も、「ビーバールーム」の収益の一部は、復興支援の一助として寄付を継続しています。地域経済の活性化だけでなく、社会的な貢献を通じて、ホテルと地域が一体となって動くことの重要性を強く感じています。
今後は、より多くの地域の企業や自治体と連携し、コラボレーションを各地の観光資源として根付かせ、日本全体の魅力向上に貢献していきたいと考えています。
コラボルームの展開による事業への影響と今後の展望についてお聞かせください
現在、全コラボルームの売上総額は、通常のホテル約1棟分に匹敵するほどの大きな収益の柱になっています。この実績は、コラボレーションが単なる話題作りではなく、持続可能なビジネスモデルとして成立していることの証明だと考えています。
現在は日本人をターゲットに販売を強化していますが、今後は本格的に海外での販売方法を検討している段階です。海外のOTA(オンライン旅行会社)では、ツインやダブルといったお部屋の種類での販売が主流であり、コラボルームのような特殊な客室の販売ができないことが課題となっています。海外のお客様にコラボルームの魅力を的確に伝える販売チャネルを確立すべく、各OTAと協議しながら新しい販売方法を設定していけたらと考えています。
弊社の目標は、コラボルームを通じて「最高の滞在体験」を提供し、変なホテルがコラボルームを展開するホテルとして世界中に認知されることです。そして、2027年までに、コラボルームとコンセプトルームを合わせて100種類まで増やしていきたいと考えています。100種類という目標は、挑戦を続ける弊社の姿勢を象徴しており、達成することで、世界のどこを探しても類を見ないユニークなホテルブランドとしての地位を確立できると確信しています。

H.I.S. ホテルホールディングス株式会社
セールス&マーケティング部 部長 兼 東日本事業部 部長
遠藤 正巳
2000年入社。HIS営業所での旅行コンサルタント、HIS東北・新潟事業部でWEB制作、ツアー企画、広告宣伝、店舗開発、東北・新潟事業部グループリーダー、HISインバウンド事業推進室、株式会社エス・ワイ・エスに出向、その後、HISホテルホールディングスにて開発・開業、ホテル運営に従事し、ホテル事業部部長、セールス・マーケティング部部長を兼任。
※記事の内容はインタビュー当時のものです。