お店を起点に地域に人流とコミュニティを作る 新しい地域活性化に挑む「47都道府県『ご当地パンエス』プロジェクト」
"47都道府県「ご当地パンエス」プロジェクト"は 株式会社日と々と のベーカリーカフェ「パンとエスプレッソと」を起点に、まちに人が集うことで地域経済や社会、文化などの動きを活発化させることを目的に、フランチャイズ開業と運営を支援する事業です。新しい地域活性化として挑戦するプロジェクトについて、担当するHIS フランチャイズ・ライセンスチームの岸さんに話を聞きました。
まずは、岸さんが所属されるフランチャイズ・ライセンスチームについて教えてください
前身は新規事業として2019年から開始しており、その頃は企業の海外進出支援がメインでした。輸出を希望する企業のサポートや展示会への出展、海外での製品テストマーケティングなどを行っていましたが、もっと持続的に企業を支えていくような事業にしたいと考え、海外で日本食のカルチャーを根付かせることができる「フランチャイズ」に目を向け、現在の部署を立ち上げました。当初は海外での展開を想定していましたが、そのタイミングで新型コロナウイルスによるパンデミックがはじまり、渡航が困難な時期が長引いたことで、まずは国内でブランディングを一緒に構築することができる企業を探すことから取り組みました。現在では、海外でのフランチャイズにも取り組めています。

そのような中で業務提携された「パンとエスプレッソと」は、どのようなブランドでしょうか
「パンとエスプレッソと」は、その名の通り、本格的なパンとエスプレッソ、カフェメニューを提供しているブランドです。出店する地域性を活かした店づくりをしており、1店舗1店舗、屋号から外装、内装、メニューなど、それぞれ異なっています。HISは、2022年12月、この「パンとエスプレッソと」を運営する「株式会社日と々と」さんと国内外におけるパートナー契約を結んでいます。フランチャイズオーナー希望者とブランドをマッチングすることが主な事業ですが、海外と日本では少し違います。海外でのフランチャイズ開拓は、国によってパンの文化や味覚が大きく異なる中で、日本のパンが持つ技術や繊細さ、トレンドとしての魅力をきちんと伝え、理解してもらうことがスタートになります。また、海外ではまだ日本のベーカリーブランドとしての実績が十分ではないため、ブランドの強みだけでなく、どのように現地に根付かせていくのか、どんなサポートができるのかを具体的に説明し、信頼関係を築くことが欠かせません。単なるライセンシー探しではなく、日本のパン文化を共に広げていけるパートナー探しである、という視点が重要だと考えています。一方、日本ではパン文化が成熟している分、その条件をどのように実行し、継続的な価値に変えていけるかがより厳しく問われます。出店する街の特性や人流、立地の文脈とブランドの相性を丁寧に見極めることが重要であり、オーナー自身にも現場を深く理解し、ブランドを長期的に育てていく覚悟が求められます。また、ブランドへの期待値も高く、店舗ごとのクオリティが厳しく問われます。そのため、単なる店舗拡大ではなく、周辺環境や地域との関係性も含めて「まちに人の流れを生み出す存在」としてどう根付かせていくかが重要になります。こうした視点を踏まえ、ブランドとオーナー、そして街をつなぐ役割を果たすことが、日本におけるパートナーシップの本質だと考えています。
日本国内で展開している「47都道府県『ご当地パンエス』プロジェクト」について教えてください
全国各地で「パンとエスプレッソと」の運営を希望するオーナーを募集し、開業と運営をサポートするプロジェクトです。カニバリゼーションが起きないよう各都道府県に1オーナー限定とし、地域性を生かしたメニューの提供と、直営店同様に外観、内装、屋号も、その土地やオーナーの思いを混ぜ込んで作り上げていきます。オーナーにはご当地メニューなど自由度を持っていただきつつ、本部である「日と々と」さんにブランドとしての品質を保つための助言や提案いただく、共創型のプロジェクトとなっています。プロジェクトの選定基準は「ブランド愛」です。特徴的で独自性のあるブランドなので、この理解がないと自分で店を経営するのはなかなか難しい。もう1つは、その地域に何かしら貢献したい、など個人的なストーリーがある方です。

HISの役割としては、プロジェクトの認知を高め応募いただく仕組み作りやマーケット調査、ご応募いただいた方への説明会の実施によるブランドへの理解を深めていただくこと、そしてライセンス契約面の調整です。パン作りや人材を育てるオペレーションは「日と々と」さんとコミュニケーションを取りながら進めていきます。
プロジェクトを立ち上げた両社の思いはどのようなものがあったのでしょうか
私個人としては、「新しい観光地を作る」という気持ちで取り組んでいます。アクセスが少し悪い場所でも、素晴らしい空間と商品があれば、そこを目当てに人が集まり、新しい人流やコミュニティが生まれます。東京で流行っているお店が人気の商業施設に入るのではなく、路地裏の古民家などアクセスが悪くても、空間作り、商品作りがしっかりしていれば、そこに足を運んでいただける。そこに人流やコミュニティが生まれる可能性があると思っています。
プロジェクトからこれまで6軒のお店がオープンしていますが、ご当地オーナーが決まるまでのエピソードなどお伺いします
第1号店となった三重県の桑名店のエピソードがとても印象に残っています。物件は人通りが少ない施設で、当初は私たちも「お客様は来ていただけるのか」と悩んだ場所でした。しかし、地元出身であるオーナー様のその物件への強い思い入れがあり、チャレンジすることに決めました。いざオープンしてみると、非日常的な空間作りやご当地食材の「蛤(はまぐり)」を使ったメニューが評判を呼び、多くのお客様が訪れる場所になりました。オーナー様が謙虚に、かつ熱心にブランドを再現しようとしてくださった結果、まさに「人流を生みたい」という私たちの願いが叶った瞬間で、本当に嬉しかったですね。達成感とやりがいと、なによりも可能性を感じました。

国内でのプロジェクトのほか、海外での展開も行っていますが、こちらはどのような事業でしょうか
現在はアメリカや台湾にて出店しています。海外での展開においては、HISが独占契約を持ち、市場調査から展開戦略の立案、ライセンシー候補の開拓までを一貫して担っています。進出地域の選定や、マスターフランチャイザー候補との面談・評価、契約に向けた調整も行い、ブランドの海外展開を支えています。日本のブランド価値を守りながら、各国の市場や食文化に合った展開を共に築いています。実は「パンとエスプレッソと」は過去にも海外出店をしていましたが、言葉や文化の壁によるコミュニケーション不足から、ブランディングが歪んでしまい撤退しています。そこを、現地支店を持つHISが橋渡し役となることで、日本の高いクオリティを維持したまま、現地の嗜好に合わせた「ローカライズ」のバランスを取りながら運営を行っています。
直近では、2025年10月1日、台湾の西門町という若者が集まるエリアに店舗がオープンしています。オープンに際し、街角の大きなビジョンに「パンとエスプレッソと」のロゴが大きく映し出されたのを見た時は、胸にぐっとくるものがあり心が躍りました。海外進出は、物流や味覚の違い、メニューのバランスなど、本当に大変なことの連続です。それでも、現地の文化を尊重しながら試行錯誤を繰り返し、日本の素晴らしいブランドが海を越えて受け入れられた瞬間を目の当たりにすると、この仕事の大きなやりがいを感じます。

アメリカでは水分が多いアジアのパンブームが来ていて、韓国や台湾のブランドが一気に何百店舗と拡大していますが、日本のブランドはほぼない状況です。フランチャイズ大国であるアメリカへの進出は結構複雑でハードルが高く、支援している会社やそこを乗り越えて進出している企業は多くない。現地で「本当の」日本食を、日本文化を体感していただく架け橋となることが、私たちが支援する意味なのではないかと思っています。
47都道府県「ご当地パンエス」プロジェクト
https://www.his-j.com/corp/theme/others/franchise/bread-espresso/

株式会社エイチ・アイ・エス
HIS FOODグループ フランチャイズ・ライセンスチーム
岸 陽一郎
2016年入社。営業所でのコンサルタントを経て、公募でHISハワイ法人に赴任しゲストリレーションズと団体の受け入れ業務を担当。帰任後、法人営業本部にて新規事業立ち上げに携わり、2019年より現職。
※記事の内容はインタビュー当時のものです。
取材場所協力:パンとエスプレッソと GINZA LOUNGE