HISグループ 公式サイト

【特別対談】さとゆめ嶋田代表 × HIS山野邉取締役が語る「持続可能な地域づくり」と新たな旅の形

2026/07/27

対談
地域社会との共生 地方創生 持続可能な社会の実現

2024年よりHISは、地域創生に特化したコンサルティング会社「さとゆめ」と新たな旅の目的地を創造する「Destination Create Project~新・目的地創造事業~」を推進しています。今回、さとゆめの嶋田代表をお迎えし、HIS取締役 山野邉と「持続可能な地域づくり」をテーマとした特別対談を実施しました。

株式会社さとゆめ 代表取締役CEO 嶋田 俊平

京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修了。大学院修了後、環境系シンクタンク勤務を経て、2013年に株式会社さとゆめを設立。
「ふるさとの夢をかたちに」をミッションに、地方創生の戦略策定から商品開発・販路開拓、店舗立上げ・集客支援、観光事業の運営まで一気通貫で地域に伴走する事業プロデュース・コンサルティングを行っている。

株式会社エイチ・アイ・エス 取締役 HIS JAPANプレジデント 山野邊 淳

ファシリテーター
株式会社エイチ・アイ・エス 法人営業本部 地域創生グループ 馬渕 龍馬

1997年入社。カウンターセールス、人事、法人団体営業を経て、ベンチャー経営者ネットワークの事務局長として従事。海外進出支援事業にも参画し、中小企業の支援を続け、現在は、地方創生事業の要としてさとゆめとHISの協業を牽引。新規事業創出に向けたハンズオン支援に注力している。

 
※記事の内容はインタビュー当時のものです。

一過性のブームからの脱却。地域振興における壁

馬渕:最初のテーマです。現在、多くの自治体が「関係人口の創出」を掲げていますが、一過性のブームで終わってしまうケースも少なくありません。地域振興における一番の課題や壁はどこにあると感じていますか。

山野邉:継続的に続けられる仕組みが作られてこなかったことです。旅行会社の観点で言えば、ツアーを作ったりお客様を送客したりしていますが、そもそも、何故その地域に人が来ないのか、今の状況がどうであるのかを考えずに対応してしまっている。実際には根本的な解決は何もしていないので、瞬間的には注目されるものの、継続しないで終わって次の業者に移っていく、ということが何度も繰り返されてきた。本来は問題解決をしなければならないのに、ミスマッチなソリューションを出していたことが最大の課題だと思います。

馬渕:持続的なビジネスモデルの欠如というのが一つの壁ということですね。嶋田代表はこの課題をどのように感じていますか。

嶋田:さとゆめは「ふるさとの夢のかたちに」というミッションを掲げて、現在、全国で50 ぐらいの地域に関わっていますが、地域に課題は尽きません。1 つの課題を解決しても、また新しい課題が出てきてあまり効果がない。そのため、さとゆめのアプローチとしては、その地域を「ふるさと」だと思う人を増やすことに注力しています。地域をふるさとだと感じて愛着や誇りが生まれれば、イベントで盛り上げようとか、簡単なことではゴミ拾いやおばあちゃんへの声掛けなど、結果的に自然と様々な課題が解決されていきます。継続性を持たせるためには「ふるさと」という愛着や誇りがあるべきだと思います。

地域に入る「さとゆめ」と、人を動かす「HIS」の掛け算

馬渕:さとゆめとHIS、両社が交わることで、地域にどんな新しい化学反応が起こると期待していますか。

嶋田:さとゆめは50人くらいの小さな組織のため、関われる地域や伴走できる範囲に限りがあります。そこに対して、HISさんにはミッション、ビジョンの実現に向けて大きなサポートをいただいています。地域に人を派遣してくださったり、さとゆめのホテルに集客していただいたりしています 。

山野邉:人々にその土地へ足を運んでいただき、地域の魅力を伝え、地域の産業を潤すことこそが、旅行業の本来の生業ですので、本当は自分たちでやりたいと思っていたのですが、ノウハウが足りないと感じていました。そんな時にさとゆめさんを知り、しっかりと地域に入り込んで更に商売にも繋げている姿に驚きました。地域を興すための魅力の掘り起こしや課題を見つけることはさとゆめさんにお願いし、全体の繋がりやネットワーク、資金面などはHISが担う。化学反応はこれからだと思っていて、楽しみにしています。

馬渕:HISは現在、従来の旅行手配業から体験価値創造業への進化を掲げていますね。そのなかで、あえて目的地を自ら作るという「Destination Create Project~新・目的地創造事業~」(DCP)を踏み出した背景にはどのような思いがあるのでしょうか。

山野邉:旅行会社がいつの間にか地域の魅力を消費する側に回ってしまっていて、地域のためになっていないのではないかと感じたんです。お客様を楽しませることはもちろんですが、社員自身にも「本来の旅行業はとても楽しく、意義のある仕事だ」という誇りを取り戻して欲しい。これは、HISグループのパーパス"「心躍る」を解き放つ"にもリンクしていると思います。

地域が自走するための「階層的な積み上げ」

馬渕:「観光」を単なる見学で終わらせず、地域の「産業振興」へと繋げ、地域が自走して稼げるようになるためには、どのような仕組みが必要だと思われますか。

嶋田:さとゆめが手掛ける「沿線まるごとホテル」の事業で気付いたことですが、事業要素をしっかり階層で積み上げていくという考え方が必要です。構想から開業まで4年かかったのですが、その間、地域を沿線という面で繋ぐコンセプトを作り、SNSアカウントで情報を発信し、地域の方々とアイデアを生み出す拠点「沿線まるごとラボ」をつくりコンテンツを作る。コンテンツが出来たタイミングで電動トゥクトゥクや電動自転車のレンタルといったモビリティを整え、最後に施設が出来上がった。階層をしっかり積み重ねていったことが成功の理由だと思います。DCPでも事業階層をしっかり丁寧に積み上げて、地域づくりをしていきたいと思っています。

山野邉:「沿線まるごとホテル」の奥多摩へ初めて行ったとき、嶋田さんが現地のカレー屋の親父さんと非常に親しく、お互いに気にかけている姿を見て「この人たちは地域にちゃんと向き合っているんだな」と感じたんですよね。僕らが単にツアーを企画しただけでは絶対に築けない関係性ですし、根っこから地域を興そうとする姿勢が伝わってきて、とても印象に残っています。

消費者から「共創者」へ。地域に愛着と誇りを

馬渕:続いての質問です。関係人口が、単なる「ファン」から、地域の経済を支える「ビジネスパートナー」や「共創者」に変わっていくための仕掛けについて、お考えをお聞かせください。

嶋田:都市と地域は支援する側、される側ではなく、対等な関係であるべきです。地域の人は同じ村民、町民として受け入れるスタンスが必要だし、外から行く人も地域の一員になったという意識を持ってもらいたい。そのため、小菅村では村に住んでいなくても関わる人を「二分の一村民」とする「分数村民制度」を取り入れ、バーチャルな住民票発行とポイントカードのシステムを作っています。現在、700人弱の村に対して約5,000人の関係人口がいます。地域に対する愛着や誇りを外の人に醸成していくことを意識しています。

嶋田:DCPで地域に入られているHISの方は、会うたびにどんどん地域の方になっていて、色んなツアーやイベントを企画されていますね。単に地域のものを見せるだけでなく、ひと工夫入れてワクワクさせる発想が流石だなと思いました。例えば、熊本県の球磨村に球磨川という綺麗な川がありますが、川の魅力を広める企画をする際、お風呂に浮かべる小さなアヒルを使ったダックレースを開催していました。川がただ写っているだけだと注目しないけれど、アヒルがいっぱい流れていたら写真も映えますし川の綺麗さにも注目してもらえる。我々が持っていなかった発想でした。

未知の心躍る魅力、両社が目指す「新しい日本の旅の形」

馬渕:最後に、DCPが目指す、これからの「日本の旅の形」とはどのようなものでしょうか。

山野邉:今は、僕たちが地域の方も知らない魅力を掘り起こして「こういう場所がありますよ」と紹介し、足を運んでいただく流れです。将来的には、旅そのものが「知らないことを知りにいく」や「地域の方との交流を通じて様々な体験をする」といった旅行者自らが旅先の魅力を探しに行くようなスタイルへと自然に変わっていくといいなと思っています。地域の在り方や旅のスタイルが変わっていくことがDCPの発展形だと考えています。

嶋田:今の世の中、人々が一番興味を持っていることは「自分自身」だと思います。自分のことが一番よく分からないから興味を持っているし、もっと豊かな暮らしや働き方を求めている。そういう「暮らしを体験する、暮らしを創る」ような観光を地域と一緒に作っていきたいなと思っています。

山野邉:地域に真っ直ぐ向き合ってくれるさとゆめさんと協業することで、日本中が活気に満ちた旅行者とそれを支える人たちで溢れるようになったら面白いと思います。かつてHISが格安航空券で海外旅行ブームに火を付けたように、DCPもそうした新しい潮流を生み出す存在でありたい。いずれはHISやさとゆめさんがいなくても地域が自走していけるようになる。それこそが、僕らが目指していくゴールなんじゃないかなと思っています。

馬渕:日本の新しい旅の形がどのようになっていくのか、私自身もいち社員として、また、さとゆめさんの応援者として非常にワクワクする話を聞くことができました。お二方、今日はどうもありがとうございました。