社会貢献活動

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特別対談 株式会社エイチ・アイ・エス 取締役相談役 行方 一正氏 × コモンズ投信株式会社会長 渋澤 健氏

平和は意識的に求めなければ達成できない。そのために旅が役に立つ。

「平和というのは空気のような存在」という渋澤 健さん。
平和の価値と時間軸、また企業の持続可能性について、渋澤さんに語っていただきました。

時間軸で考えると平和の価値が見えてくる

行方 2016年3月の「シェイプ・アジアパシフィック2016広島」にはH.I.S.グループも参加し、世界の人々がいかに相互理解を深め、信頼関係を築いていくべきかを考えてきました。渋澤さんには、その司会者として大変お世話になりました。企業がどのように平和構築に関わるかについて、改めてお聞かせいただけますか。

渋澤 まず、世界の平和を語り合う場所に企業が参加し、次世代を担うグローバルシェーパーズがどのように貢献できるかを提案する、それを広島で開催したというのがすばらしいと思います。そもそも私が平和ということを深く考えるようになったきっかけは、2001年の9.11同時多発テロでした。当時はシアトルに出張中で、あの事件を米国でリアルタイムに経験しました。その時思ったのは2つのことです。1つは、平和というのは空気のような存在だということ。あるのが当然で、失われた時にはじめてその大切さに気付くものだということです。もう1つは、暴力的な衝突というのは、実は人と人との間の自然な現象なのではないかということ。人間には欲望があり、人と人の間だけでなく、国と国、民族と民族との間でどうしても対立します。実は平和というのは、意識的につくらないと人間界では存在しないのかもしれないということです。

行方 確かに、欲や利害関係から対立は自然に起こってしまいますね。

渋澤 なぜ私たちが平和を必要とするかというと、そこには時間軸があると思います。人間が長い間ともに生活するには、ギブアンドテイクが必要です。倫理や道徳もあり、それは人間が平和を維持するための知恵だと思うんです。

行方 社会が持続的に存在するために、社会規範や文化という形でルールができ、それが抑止力として働いて次の世代に継続していくということですね。

渋澤 少し話が飛ぶかもしれませんが、資本主義や民主主義は「自分のため」ということで暴走する。もちろん今の自分も大切ですが、自分の子どもや孫の未来の世代のことまで考える資本主義・民主主義であれば、平和的な民主主義・資本主義になり得る。逆に、目先のことだけ考えてしまうと、暴力的な資本主義、民主主義になりやすいのだと思います。

行方 常に長期的な時間軸で考え、平和というのは当り前じゃないんだと意識していることが大切なんですね。

渋澤 そうです。そして平和を意識するためには、相手の立場を想像することが必要です。H.I.S.グループの仕事はそれにつながります。誰でも気軽に海外に行くことができて「こういう世界がある」ということを体験できる。海外に出ることは大切なことだと思います。

H.I.S.グループが考える平和と暴力
長期投資にかなう企業選びの視点〜見える価値と数値化できない価値〜

行方 現在、日本の海外渡航者数は横ばいです。日本人はもっと海外に出ていく必要があると思われますか。

渋澤 思います。日本という枠の中にいる人が海外に出るということは、外から見ることで、自分の来たところの良さに気付くという意味をもっています。また、いろいろな視点をもつことで、自分の枠が少しずつ大きくなっていきます。枠の中は、快適な安全地帯です。安全を求めるのは人間の本能です。しかし、その枠にとどまっていると、自分の枠が少しずつ小さくなっていくことに気付くべきではないでしょうか。

行方 コモンズ投信は、長期的投資を目的に事業活動をされ、また、渋澤栄一さんの「論語と算盤」の研究会を進められています。どんな会社が持続可能であるとお考えですか。

渋澤 コモンズ投信は、投資先の選択に関して5つの視点をもっています。1つは収益力。それはROEなどで示される財務的価値です。数値化できるので「見える価値」と呼んでいます。残りの4つはいずれも見えない、なかなか数値化できない価値です。実はこちらに、企業の持続的価値創造の可能性が隠れています。その1つが競争力。なぜその会社が競争力をもっているのか、ということです。次に経営力。良い会社にはすばらしいリーダーシップがあります。経営力とは、それを次世代に、いかにうまくバトンタッチできるかという力です。次に対話力。これはガバナンスだと思います。企業の持続的な価値をつくるための土台です。さまざまなステークホルダーとの対話が大切です。そして最後が企業文化。人が一番大切な資源・資産ですが、人をどう評価するか、これを上手く表現できるかということも企業文化に属することだと思います。「論語と算盤」は道徳資本主義の象徴といわれていますが、ただ正しいこと、清いことをやりましょうという教えだけではなく、道徳・倫理が大切なのは持続的価値をつくるためであり、ともにウィンウィンの状態で共創が可能になるという教えだと私は理解しています。

行方 なるほど。そこから持続性が生まれてくるのですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

渋澤 健 /しぶさわけん

1961年生まれ。国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ株式会社を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。